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【イベントレポート】ベイジ代表・枌谷さん、THE COACH代表・こばかな、デザイナー出身の経営者たちが考えるマネジメントや組織づくり

働き方の多様化、業務内容の複雑化などが進み、リーダーの指示命令によってマネジメントすることが難しい時代となった現代。

個人の可能性を発揮して、いかに組織の力にしていくのかを考えるため、THE COACH ICPでは、2022年1月26日、イベント「現代のマネジメントに生きるコーチングの考え方」を開催しました。

ゲストにお招きした株式会社ベイジ代表の枌谷力さん、THE COACH代表のこばかなが視聴者の皆さんからいただいたマネジメントに関するお悩みや質問をもとにトークセッションを行いました。このnoteでは、当日の様子をダイジェストでお届けします。

〈登壇者プロフィール〉

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枌谷 力(そぎたに つとむ)
BtoBサイトの制作と業務システムのUIデザインに強い会社ベイジ代表。およびクラスメソッドCDO(Chief Design Officer)。新卒でNTTデータに入社し、営業職に配属。28歳で実務未経験でデザイナーに転職し、制作会社を2社経験したあと、35歳でフリーランスとして独立。その後2010年にベイジを起業。デザイン、ウェブ、マーケティング、コンテンツ、SNS、採用、組織マネジメント等、幅広いテーマで活動。登壇&執筆多数。経営者として登壇や寄稿をすることが多いが、本職はデザイナーであり続けたいと思っている。

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こばかな
デザイナーとして株式会社DeNAに入社後、株式会社THE GUILD、フリーランスを経て株式会社THE COACHを創業。キャリアとエグゼクティブを中心にコーチングの実績400人以上。国際コーチング連盟認定コーチ(ACC)。THE COACH ICP開講以来、講師として150名以上のトレーニングを担当。Twitterやnoteでコーチングについて発信しており、SNS合計フォロワー数6万人以上(2021年3月時点)。

権限移譲が進まない

トークセッション (1)

横断チームのマネジメントを行っています。把握すべき範囲が広いため、権限移譲をしないと手一杯になってしまうのですが、うまくできずにいます。権限移譲を進めるために意識することや取り組むべきことがあれば教えていただきたいです。

こばかな:事前に視聴者の皆さんから、このようにマネジメントに関するご質問をいただきました。メンバーに対する権限移譲に関して、枌谷さんはどうお考えですか。

枌谷:私自身経営を10年以上やってきていますが、権限移譲は難しいですよね。権限移譲が失敗する例として、マイクロマネジメントが要因になりやすいんです。

おそらく失敗を恐れて口を出しすぎてしまうと思うのですが、ある程度メンバーを信じて任せる、マネージャーとしてどんと構えている必要があるのかなと思います。

こばかな:マイクロマネジメントの話はコーチングをしていてもよく出てきますね。コーチング的な観点でいうと、どうしてマイクロマネジメントをしたくなってしまうのかに着目することがあります。

失敗したくない気持ちが強すぎる、メンバーを信用しきれていない、自分が仕事することで安心感を得ている。このように、権限移譲を”進めないこと”の良さがご自身の中にあるのかもしれないです。

全体最適を考えて、自分自身の価値をシビアに見極めるのが、権限移譲につながるのではないでしょうか。

プレイヤー経験が浅い中でのマネジメント

27歳で営業課長として仕事をしています。プレイヤーとしての実績がほとんどないため、年上かつ経験豊富な部下に対して、発言や行動に100%自信を持つことができませんません。どうすれば自分自身を肯定的に捉え、課長の器にふさわしい人間になれるでしょうか?

枌谷:27歳で課長となるとプレッシャーを感じてしまいますよね。ある程度マネジメントを経験したから言えることですが、実は自分の方が優れている状態でマネジメントできるケースは少ないんです。

私は社内で1番年上ですが、実務面でメンバーの方が詳しいことはよくあります。年齢が上、経験が豊富、高スキルでないとマネジメントできないという固定観念があるのならば、それは捨てたほうが良いかもしれません。

おそらく経営陣は「この人は会社の問題を理解している」と考えて、質問者さんを課長に任命したのだと思います。上から管理をするのではなく、どんな課題を抱えていて自分は何が分かっていないのか、メンバーを頼るスタイルもありではないでしょうか。

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こばかな:確かに、上下よりもあくまで役割の違いと捉えると良さそうですよね。最近、従来の「強いリーダー」ではなく自分らしさを発揮しながらリーダーシップも発揮する、「オーセンティックリーダーシップ」という言葉を耳にすることがあります。

わからないことやできないことを素直にメンバーと共有しつつ、必要な人材を巻き込んでいくスタイルは良いかもしれません。

枌谷:組織が成長すると、自分より優秀な人を社内に入れるフェーズが必ず来るんですよね。この経験は市場から評価されやすいと思うので、質問者さんは27歳で良いチャンスを得ている気がします。

経営層とメンバーの壁が分厚くなってしまった

経営層と一般メンバーが、信頼構築するためのコミュニケーションや仕組みについて伺いたいです。月に一度経営層と面談を行うのですが、直近の業務についての確認がメインの内容です。相談にも乗ってもらえるのですが、結局自分がなんとかするしかない、声を上げても無駄と諦める結果になりがちです。そのためか、入社してからの期間が経つほど、経営層への不信が募る傾向にあり、優秀なメンバーが組織にとどまらない状況です。

枌谷:これは難しいですね。この質問を見た限りでは、ご質問者さんがなんとかできる範囲ではなく経営層に問題があると思います。

こばかな:そうですね。おそらく経営層とメンバーのコミュニケーション不足が問題かなと思います。THE COACHでは法人向けにグループコーチングをすることがあるのですが、単純なコミュニケーション不足が原因で、チームビルディングがうまく行かないケースはよくあるんです。質問者さんのように1on1が業務確認の場になったり、そもそも1on1をやっていなかったりすることもありますね。

古い言い方になってしまいますが、業務時間外のコミュニケーションを増やすことで接触頻度を増やすのもありかなと思います。飲みニケーションが昔からあったのにはそれなりの理由があって、会議室ではできない話をする場も大事なんですよね。

枌谷:リモートワークが普及してマネジメントのあり方としてひとつ変わったのが、雑談や業務と関係ない交流自体をマネージャーがあえてマネジメントする必要がある。

リアルで会って心がつながっているからこそリモートワークがうまくいくと思っているので、ベイジでも会社負担でそういった場を設けることはあります。

こばかな:リモートワークを推奨している企業は何らかの施策をやっているイメージですよね。

質問者さんから「コミュニケーション不足ではと何度か伝えて、1on1も提案したのですがうまく回らない状況でした。」とコメントをいただきました。やはり難しそうですね。

枌谷:ボトムから変えるのは大変なんですよね。つらい状況が続くのであれば、私だったら転職を検討するかもしれません。

マネジメントとコーチングって本当に相性が良いんですか?

マネジメントは、組織として一定の物差しで評価することから逃れられません。コーチングとは根本的な思想が異なるように思っており、どう織り交ぜていくか、とても悩ましく思っております。

こばかな:質問者さんの話に補足すると、コーチングでは基本的に相手を評価・判断しません。一方、マネージャーはその役割上、どうしても評価・判断する場面が出てくる。このような葛藤について枌谷さんはどうお考えでしょうか。

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枌谷:市場から円という単位で評価され、事業を維持し続けなくてはならないシステムの上にいる以上、企業や働く人は評価からは逃れられないと思っています。

でも、だからといってコーチングとマネジメントとの相性が悪いというわけではありません。マネジメントの中でも、一定の物差しで評価できる部分と、そうでない部分があるので、その領域でコーチングを活用するとうまく働くのではないかと思います。

こばかな:おっしゃるとおりだと思っていて、コーチングをマネジメントにどう再解釈するかが大切になってきます。

仮に数字的な成果が出ていないAさんがいるとすると、ファクトベースで成果が出てないと伝える。「成果が出ていないからAさんはだめだ」と人格否定をしないのが、コーチング的なマインドなのかなと思います。

メンバーに改善を求めたいけれど、人間関係を壊したくない

上司や同僚に改善を求めたいのですが、その伝え方に関してご助言をいただけたら嬉しいです。相手を嫌な気持ちにさせてしまうかと思い、これまでは指摘や注意などをしてきませんでした。ただ相手の業務遂行能力は私の仕事にも影響してくるため、そろそろ心が限界に.....。
また、最近アサーションという言葉を知りました。相手を尊重しつつ、自分の考えを率直に伝えるということで、まさに私が今身に付けなければいけないスキルだと思いました。相手を傷つけたり、人間関係を壊さずに、改善を求めるにはどのように伝えるのが良いでしょうか。

こばかな:文面から葛藤が伝わってきて、長い間悩まれていたのだろうと推察します。アサーションは自己主張を押し付けすぎずかつ我慢もしすぎない、相手を尊重しながら意見を伝え合うコミュニケーションスタイルですね。

枌谷:質問者さんは、日頃から相手を傷つけないよう心がけている一方で、その心がけが強すぎて苦しんでいるようにも思えました。

おそらく質問者さんが、言い過ぎかもと思ってしまうくらいでバランスが取れるような気もします。そのときは一時的に相手が不機嫌になったり、落ち込んでしまうかもしれませんが、腹を割って話すことでいずれ良い関係になる場合もあります。

アサーションの考え方は大切かもしれませんが、思い切って普段考えていることを伝えてみてはいかがでしょうか。

メンバーの中に向上心が無い人がいる

6年目のデザイン会社を経営しています。とあるメンバーとの関わり方について質問です。30代中盤で、リモート勤務、中途で入社。モチベーションが無い上に、コミュニケーションがとりづらい人が社内にひとりいます。その人に対して、どのように指摘やフィードバックをすればよいかわかりません。自分と周りのモチベーションを下げてしまい、非常に高コストで負担を感じています。

枌谷:経営者目線でいうと、そもそも採用に問題がある可能性が高いです。ここから質問者さんが考える理想的な働き方に改善してもらうのは、やや難しいかも。

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こばかな:前提として、その方とどれだけコミュニケーションを取っているかわからないのですが、コーチング的なアプローチをするならば、その人が会社にいるモチベーションを引き出してみるのが良いかもしれません。

個人として成長するためなのか、単純にお金のためなのか。その方の考えていることと、会社の方針がうまくクロスする部分を探してみるアプローチは可能です。

もし色々やった上で関係性が変わらないのであれば、その方のために時間を割くのではなく、他の大切なメンバーのために時間を使っても良いのかもしれないです。

枌谷:確かにそうですね。もし1on1などでじっくりお話されていないのに、モチベーションが無いと決めつけてしまっている場合、話し合いの上で関係性が改善するかもしれません。

こばかな:自分が誰かに対して思うことを「事実」と「解釈」に分けた場合、たいていが解釈だった……というのは実はよくある話です。今回の場合だと、「30代中盤、リモート勤務、中途で入社」が事実。「モチベーションが無い上に、コミュニケーションがとりづらい」などは質問者さんの解釈である可能性もゼロではありません。

もしかしたらその方はやる気に満ちていて、質問者さんがご自身の解釈でその方を見てしまっている可能性があるので、改めて向き合う時間を作ってみるのはありかもしれません。

フリーライダーとの接し方

チームマネージャーをしています。肩代わりしてくれる積極的なメンバーに業務を任せてしまう、フリーライダーがチーム内で出てくることが悩みです。チームの生産性を上げるという観点から、このフリーライダーの方とどう接していくのが良いでしょうか。

枌谷:フリーライダーになるなと言って、その人に改善してもらうのはおそらく難しいでしょう。フリーライダーを評価しない組織として、評価制度自体を変えるのがいちばん良いです。

特徴的な行動特性を評価指標の中に入れて、その行動が顕著な人は評価が下がる仕組みにしてしまうのです。もしかしたら今は、フリーライダーであることが有利な仕組みになっている可能性もありますね。

もし組織全体の仕組みを変えることが難しければ、質問者さんのチーム内で独自の評価基準を設けるという手もあります。会社としてのオフィシャルな評価基準とは別に、マネージャーが独自に設定した評価基準、両方のものさしで見ていく運営もありです。

こばかな:なるほど。それぞれのチームによって働き方や細かい役割も違ってくるだろうし、チームごとの評価基準を設けることで小さく抑えていくのは良いですね。

枌谷:チーム内での行動指針やバリューなどを考えてみると、ちょっとした経営ゲームになって良い経験になるのではないでしょうか。

プレイヤーとしての業務に追われ、マネジメントに時間が割けない

自分がプレーヤーとして現場に出ることが、どうしても多くなってしまいます。この状況だと、自分がマネジメントに時間を割けない、メンバーが育たないことが懸念されます。創業当時やリソース不足のときなど、何か工夫されていることはありますか?

枌谷:私もずっとプレイングマネージャーなので、質問者さんの気持ちがよくわかります。納期が迫っていると、目の前の業務の緊急度が高くなるので、中長期的にトライしなければならないマネジメントは後回しになりがちです。

たとえば、自分がやっている仕事をその場限りのもので終わらせるのではなく、テンプレートやフォーマットとして残すことで、仕組み化を進めるのはいかがでしょう。その仕組みが人に浸透するのは時間がかかりますが、地道に続けることでマネジメントのしやすさが向上するはずです。

こばかな:仕事効率化のために環境を整備する、エンジニアリング的発想ですね。プレイヤーとして、マネージャーとして何に時間を割くのか。経営する上でこの悩みはあるあるだと思います。

私自身THE CAOCHを創業する前はデザインチームにいて、自分でクライアントワークをする環境でした。今の立場になってからマネジメントをするようになり、メンバーに任せることで、自分よりクオリティの高い仕事をしてくれる経験をさせてもらっています。

自分単体をリソースとするのではなく、チーム全体のメンバーをリソースとして考えたときに、おそらく自分のやるべきことが見えてくるはずです。

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枌谷:プレイヤー型の人は、任せることが怖い、自分自身のやりがいがなくなるかもと思うかもしれませんが、案外不安が現実になることはありません。

私自身も、クライアントから褒めていただくことが嬉しくてデザイナーをやっていました。ですが最近は、メンバーの成功や成長を見る方が嬉しくなってきて、権限移譲は進んで行えています。

こばかな:良い話ですね。私もプロダクトをデザインする立場から、今は組織や事業を作る立場になりましたが、両方とも同じモノづくりとして私の中で捉えています。組織をデザインするという文脈もあるように、デザイナーと経営は根本的には変わらないのかもしれないです。

組織から期待されるマネージャー像と自分らしさにミスマッチが

私は人を大切にするマネージャーでありたいと思っていて、周りの人たちとの気のおけない関係をとても大切にしています。シンプルに指示や意見を言いますし、部下からも率直にOKやNGと言ってもらえる関係でありたいのです。
しかし、組織の幹部からは私のマネジメントのスタイルは弱い、まどろっこしいと評されます。人としてこうありたいと思うオーセンティックな自分のまま、組織から期待されるマネージャーの姿も表していくのは難易度が高すぎる.....。私に活路はあるのでしょうか?

枌谷:率直に読んだ感想として、「人を大切にするマネージャーでありたい」「部下からも率直にOKやNGと言ってもらえる関係でありたい」など、質問者さんがマネージャーのあるべき像に囚われていると感じました。

マネージャーとしてあるべき姿を体現するために仕事をしてほしいのではなく、問題の解決のために何をしたのかを経営層は見ているのではないかと推測します。

ご自身のマネージャー像を捨てるまではいかなくても、周りが何を求めているのか、見つめ直してみることで活路は見出だせると思います。

こばかな:なるほど。まず私は質問者さんのモットーがすごく好きで、素敵なリーダーシップのあり方だと思います。今の会社とのミスマッチが起きているのであれば、今のままでもフィットする会社は世の中にたくさんあるはずです。

ご質問から察するに、経営層の方が期待しているのはマネジメントスタイルの良し悪しではなく、成果の方かなと思いました。「成果を出すために、自分らしいマネジメントスタイルって何だろう」そういった問いを立てて考えるのも、面白いのかもしれません。

こばかな:本日はありがとうございました。振り返ってみていかがでしたか。

枌谷:こばかなさんからコーチングの考え方を聞きつつ、考えを巡らせることができるので、正直なところ私得なイベントだったと思います。経営者として日々試行錯誤しながらマネジメントをしていて、コーチングの導入も検討している最中なので勉強になりました。

こばかな:皆さんからいただいたご質問の熱量がとても高く、今日ご紹介できたのはその一部でした。人の悩みは尽きることがなく、それと日々どう向き合うかが大事だと思っています。コーチングは生涯役に立つスキルになり得ると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

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