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“やりたいことは、自然にやっちゃうこと” 八木 仁平さんと考える「自分について理解して、やりたいことを見つける方法」

進学先や就職先、転職先を選ぶ際、自分はどんなことに向いているのか、本当にやりたいことは何かなど、考えたことのある方は多いと思います。しかし、ただ「自分には何が向いているの?」と考え続けても、なかなか答えは出ないもの。

そこで今回THE COACHでは、「自分について理解してやりたいことを見つける方法」と題し、イベントを開催しました。ゲストにお招きしたのは、株式会社ジコリカイの代表で、自分を理解するための独自の手法、「自己理解メソッド」を提供する八木 仁平(やぎ じんぺい)さんです。

事前に視聴者のみなさんからいただいたご質問やご相談をもとに、八木さん、THE COACH代表こばかな、岡田さんの3名で、自分について理解してやりたいことを見つける方法について一緒に考えた本イベント。視聴者の皆さまからは、誰もが「わたしも考えたこと、ある!」と思わず共感してしまうような質問が多く寄せられました。それらに対して、3人がイベントの中で撒いたヒントとは……?

本noteでは当日の様子をダイジェストでお届けします。

〈登壇者プロフィール〉

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八木 仁平(やぎ じんぺい)
株式会社ジコリカイ代表。早稲田大学商学部卒業後、ブロガーとして独立。その後2017年に「すべての個性が調和した世界をつくる」ことをビジョンに、株式会社ジコリカイを設立。著書『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』は25万部を超え、2021年のベストセラーTOP10入り。3ヶ月10STEPでやりたいこと探しを終わらせる「自己理解プログラム」を提供している。また、「自己理解プログラム」をサポートするコーチを養成する「自己理解コーチアカデミー」を運営している。

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こばかな
デザイナーとして株式会社DeNAに入社後、株式会社THE GUILD、フリーランスを経て株式会社THE COACHを創業。キャリアとエグゼクティブを中心にコーチングの実績400人以上。国際コーチング連盟認定コーチ(ACC)。THE COACH ICP開講以来、講師として150名以上のトレーニングを担当。Twitterやnoteでコーチングについて発信しており、SNS合計フォロワー数6万人以上(2021年3月時点)。

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岡田 裕介(おかだ ゆうすけ)
THE COACH 取締役。株式会社パーソルキャリアに入社。転職支援・採用コンサルティングに従事。その後、オルタナティブスクールを運営する教育系のソーシャルベンチャーを共同創業・副代表理事に就任。独立後は、認定プロフェッショナルコーチとして、スタートアップ企業の経営者・CxO・マネジメントクラスを中心にコーチングを提供。国際コーチング連盟認定コーチ(PCC)。

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自己理解メソッドとは
八木さんが考案した、キャリアに迷う人たちのための独自のプログラムのこと。
・大事なこと(価値観)
・得意なこと(才能)
・好きなこと(興味)
の3つの観点から自分を見つめ直すことで自己理解を深めていきます。
※詳しくは、八木さん著『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド 』をご覧ください。

家族の幸せと自分のやりたいこと、どちらを取れば

いちばん大切な家族の幸せなどを考えたときに、「自分のやりたいこと」と給与や労働条件などの兼ね合いに悩んでしまいます。今の環境を手放し自分のやりたいことを進めていくと、家族の幸せを奪ってしまう恐れもあります。自分たちらしく生きるのがとても難しいと感じており、何かこれをテーマに皆さんの対話を聞きたいです。

こばかな:視聴者の方からこのようなご相談をいただきました。おそらく、やりたいことの方向性は決まっていて、それにチャレンジする場合のリスクについて悩まれているのだと思います。

八木:ご家族のことを大切に思っているんですね。その一方でやりたいことを仕事としてできずにいる。僕のプログラムを受けてくださる方の中にも、やりたいことが見つかり今の仕事を辞めるかどうか、現実に直面する方は多くいらっしゃいます。そのときは「挑戦ではなく実験と捉えては?」とお伝えしているんです。

挑戦って崖から飛び降りるくらい難しいイメージがして、僕自身も苦手な言葉です。しかし挑戦ではなく実験と捉えてみると、失敗が当たり前になる。たとえば副業として小さく始めてみるのも、ひとつの手ではないでしょうか。

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こばかな:文面から推察するに、家族の幸せとご自身のやりたいことをトレードオフのように感じてしまっているのかも。

AかBかではなく、もしかしたら両方のメリットが取れてどちらのデメリットも消せるような、C案が浮かぶ可能性もあります。八木さんがおっしゃるとおり、副業で始めるのはそのC案になりやすいと思うので、私もおすすめしたいです。

岡田:実験的に走り出してみると、見えてくる景色が変わってくるかもしれないですよね。スモールステップで何かを始めるのは有効だと思っていて、以前に脳科学者の先生から似たお話を聞きました。健康のため朝に運動をしたいと思っていたのですが、僕はそれがなかなかできず先生に相談したんです。

すると、「運動するかどうかは置いておいて、朝起きたらまずは外に出てみて」とアドバイスいただいて。運動するかどうかの意思に関わらず、スモールステップを踏んだことで脳のスイッチが入るらしいんです。外に出たこと自体に意味がある。それによってだんだん自分の中のハードルが低くなって、朝に運動できるようになりました。

八木:大事ですよね。無理のない範囲から、右足だけ飛び出して帰ってくるみたいな。新しいことへのチャレンジを、実験や練習と捉えるとよいかもしれません。

他者の目を意識してキャリアを考えてしまう

将来のキャリアプランを考えるとき、スマートに見えそうなキャリアや、著名人が推奨するキャリアに目がいき、転職のミスマッチを起こした経験があります。他者目線でキャリアプランを思い描くのではなく、自身の内発的動機から5〜10年後のキャリアを考えるにはどうすれば良いでしょうか。

八木:他者目線や外発的動機からキャリアを考えることが、一概に悪とは言い切れません。ですが、この方はそれで転職がうまく行かなかった経験があるんですね。

僕の会社の自己理解プログラムでも、外発的・内発的動機を整理するワークを提供していて、大事なこと・得意なこと・好きなことという3つの観点から考えていきます。質問をしてくださった方も、そのように考えてみるのはいかがでしょうか。

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岡田:外発的な動機が入口となってキャリアを考えることが悪ではない、というのは僕も同意です。何かを始める際の動機が、外発的か内発的かどうかは、個人的にそこまで問題はないと思っています。

たとえば誰かへの憧れという感情は、結局は自分自身の内的な要因が反応して、憧れを持つと思うんです。なぜ自分が外的な刺激に反応したのかを観察することで、内発的な動機にたどり着くこともあります。

こばかな:私も外的な刺激に引っ張られてしまいがちです。おそらく問題となるのは、外的な刺激と自分の願いを混同してしまうことなのかな。

周囲の声がいつの間にか自分の心の声と錯覚して、次第に「あれ、ちょっと違うかも」とモヤモヤしてくる。そのときに「私はどうありたいんだろう」と矢印が自分に向いた問いを投げかけてみるのが、コーチングらしいアプローチなのかなと思います。「私が」ではなく「皆が」を主語にしている人は、注意してみるといいのかもしれません。

好きなことにトライしても続かない

転職したことがありません。今の会社で普通に働いていれば給料がもらえますし、パワハラはありません。でもこのままでは嫌だと思っている自分がいます。楽しくないのです。自分が好きなこと、やってみたいことにチャレンジしましたが、あまり続かずに終わってしまいます。こういった場合、次はどのような行動をするのがいいでしょうか。

八木:やりたいこと、好きなことが続かない原因のひとつとして、やり方が自分にフィットしていないケースは多くあります。たとえば好きな分野を学ぶとして、本当は誰かと一緒にわいわい勉強するのが向いているはずなのに、ひとりで黙々と勉強して断念してしまう。

岡田:やり方が間違っていてうまく進まなかった結果、「これは自分がやりたいことじゃなかったのかも」と思ってしまうことはありますよね。ほかに新しいことが続かないケースとして、誰かと比較することでモチベーションが損なわれることもあります。

たとえば好きな分野の本を月に1冊読んでいるとして、ほかの人が本を毎日読んでいるのを見ると「あの人より読書の量が少ないなら、自分は好きじゃないのかな」と勘違いしてしまう。学びの深め方やスピードは人それぞれで構わないはずなのに、不必要な客観性を取り入れてしまうと、こういった現象が起きてしまうんです。

こばかな:別の方からの「やりたいことは好きなことだけでなく、ネガティブなことが起因となることはありますか」とコメントをいただきました。たしかに、社会に対する不満や課題解決がやりたいことにつながるパターンもありますよね。

キャリアが積み上がっていないと感じる

30代で社会人生活を振り返ると、「キャリア」と呼べるような仕事をしてきておらず、この先どうやってキャリアプランを描いたらいいのか困っています。これからやりたいことを実現させるためにはどう動いたらよいのでしょうか。

八木:キャリアを棚卸ししたところ、積み上がっていないと感じてしまっているんですね。

岡田:僕の場合はキャリアに失敗はないと考えています。僕の20代のキャリアは荒れていて、基本的に2年以上続かなかったんです。人材会社で働いたり、起業して教育分野に携わったり。

ただすべて人に関わる仕事に携わっていて、今もTHE COACHで人に向き合っていて、振り返ればすべて必要なことをやっていた気がしています。それがいつ花開くかの差だと思うので、キャリアと呼べない仕事なんてないのでは、と思いました。

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こばかな:私もコロコロ転職して、積み上がっていない人間です。美大→Webデザイナー→フリーランスのコーチ→THE COACH代表と、スペシャリストではなくジェネラリストタイプ。

ただ、関連性のないように思えるキャリアだからこそ「デザイナーだったから、わかりやすくコーチングを説明できるんですね」と言われ、コーチとしてオリジナリティが生まれることがあります。

八木:積み上がっていないために、誰とも被らないポジションを取れている、ということはありますよね。

転職先の選び方がわからない

現状の漠然とした閉塞感から環境を変えたいと思い、初めて転職します。ただ「これがやりたい、こういう仕事がしたい」といった明確な軸がなく悩んでいます。これまでの業務の棚卸しや自分と向き合う時間が必要と思うのですが、そこでヒントとなる考え方がありましたらご教示いただきたいです。

岡田:仕事探しの軸は100人いれば100通りあると思います。僕の場合であれば、働くことで何を求めたいのか、何を満たしたいのかを入り口にすると考えやすくなります。

今の僕が働くことで得ているのは、やりがいや情熱。お金を稼ぐという観点であれば、個人でやっていくことは可能です。しかし、あえてTHE COACHというチームで働くことで、個人ではたどり着けないような場所まで行くことができる。

尊敬し信頼できる人たちと一緒に、実現したいことに向かっていくプロセスは、ひとりでは体験できない興奮や感動があるんです。

こばかな:岡ちゃんとは別の観点で、THE COACHでお伝えしているのは「コーリング」という考え方です。急に料理教室に通いたくなったり、突然陶芸に心ひかれるようになったり、何かに呼ばれるような感覚をコーリングと呼んでいます。

「やりたいことがない」という人は、何らかの理由でこのコーリングをへし折っている可能性があるんです。心が響いてピンとくる状態は、人によって年に1回来るか来ないかというレアな人もいます。コーリングを素直に聞いてあげることで、「やりたいことがない」という状態を脱却できるのではないでしょうか。

八木:自己理解プログラムを終えて、「やりたいことってこれだったんだね」と皆さん口にされます。新発見ではなく、思い出す感覚。そういえばコーリングが来ていたな、と振り返るのも良いかもしれないですね。

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こばかな:すでに自分の中に答えがある可能性は高いです。視聴者の方はおそらく20〜40代の方が多いと思いますが、すでに数十年生きている中で、必ずご自身の記憶の中に心に響いたものがあるはずです。やりたいことをみつけるために、自分の中にあるリソースを掘り起こす作業は、いちばん効率が良いのかも。

やりたいことがたくさんありすぎて困る

好奇心旺盛で、やりたいことが見つかりすぎてしまいしんどいです。今の仕事もすごく楽しいです。皆さんはこの場合どうされますか。

八木:好奇心旺盛なのは素晴らしいことです。一度やりたいことをリストアップしてみて、そのやりたい度合いを整理してみるのはいかがでしょうか。

「それは興味か憧れなのか」「やりたいことに対して問いが湧くか」「仕事につなげたいか」「内発的動機か外発的動機か」など4つの判断基準で、やりたいことを絞る方法もあります。

たとえば、パンづくりに対して問いが湧いてこないのであれば、現段階で消費者レベルの「好き」。パン屋をオープンするほどこれから好きになる余地はありますが、ほかに優先したほうがよい「やりたいこと」があるかもしれません。

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岡田:AもBもCも全部したいけどできない、葛藤があるんですね。僕も好奇心旺盛なタイプでいろいろやってしまいます。とはいえ時間には限りがある。全部完璧にやりきるのは難しいので、やりたいことが10個あるうち3個でもできたら、僕は幸せという感覚です。

こばかな:「やりたいことがありすぎて時間が足りない」という相談は、私もよく受けます。これは以前にしたツイートで、その相談に対する解決策を紹介しました。

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こばかな:「今やっていることの時間を削る」「やることの時間効率を上げる」「自分のキャパシティを広げる」などの解決策がありますが、いちばんおすすめなのは「時期をずらすこと」。

長期のスパンで考えると結果的に全部できたよね、という考え方です。1月はこれ、2月はこれというように、長い目で見たらやりたいことができているよね、と心が落ち着く方はけっこういらっしゃいます。

大学で勉強していることが仕事で生かせないかも

自分のやりたいことが何かわかりません。大学で学んでいることが直接仕事に結びつかない可能性が高く、就活でどのように考えればいいのかアドバイスいただけると嬉しいです。

八木:僕が思うに、教育や医療などの専門職でない限り、大学で学んだことが直接つながることってほぼないような気がします。

「大学で学んでいることにこだわらず、これまで自分がおせっかいをして喜んでもらえたことってなんですか」と、僕はよく聞くことがあります。おせっかいって内発的にやってしまうことなので、それが人の幸せに結びつくなら、これほど仕事にぴったりなことはないと思っています。

こばかな:無理に大学で学んだことを生かさなきゃ、と思う必要はないですよね。私は美大のグラフィックデザイン科に通って、同級生のほとんどはグラフィックデザイナーになりましたが、私はWebデザイナーに。

はたから見るともったいないと言われるのですが、あえて違うジャンルに行くことでそれが希少価値になることはよくあります。

岡田:就職活動のとき、「もったいない」という言葉はパワフルに働きますよね。僕は大学の図書館に3年間こもるくらい簿記の勉強をしていましたが、ファーストキャリアは簿記と全く関係ない人材会社でした。もったいないという言葉は、自分のありたい姿をぼやけさせることがあるので、気をつけた方がよいかもしれません。

長期的な視点からキャリアを考えられない

短期的な目標や目の前の必要なことには取り組めますが、長期的な人生の目標やキャリアプランは描くことができません。人生に正解などないと思うのですが、社会にとって価値のあることをしないと収入を得られず生活もできないわけで......。何が正解か、誰かに教えてもらいたいと思ってしまいます。

岡田:キャリアの描き方は人それぞれなので、短期で目の前のやりたいことをして幸せを感じる人もいますし、長期から逆算して自分のキャリアを描き納得感を持って歩むことで幸せを感じる人もいます。

ちょっと話はそれますが、未来や過去の概念がなく、今この瞬間を生きているピダハン族がいるというのを聞いたことがあります。未来に対する不安がないからメンタルが不健康になることは少ないらしく、世界一幸せな部族と言われているらしいです。

長期的なビジョンを描くことが、もしかしたら質問者さんにとって最適ではないのかもしれません。

こばかな:最近はVUCAという不確実な時代と言われていて、未来の予測自体が誰もできなくなっていますよね。個人的には、未来のことを考えるのは意味がないと思ってしまいます。

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八木:以前に読んだ文化人類学の本に、そもそも人間の脳に遠い未来のことを考える機能は備わっていないという説がある、と書いてあったことを思い出しました。

人類史という時間軸で考えたときに、その日暮らしの狩猟採集時代から、長期を見据えた農耕牧畜時代に切り替わったのはごくごく最近のこと。現代のスタイルになってからの世代のサイクルが圧倒的に少ないため、狩猟採集時代に今の身体が作られた説が濃厚らしいんです。岡ちゃんが言うピダハン族は、人間の身体に素直に生きているのかもしれないですね。

やりたいことは、自然にやっちゃうこと?

岡田:最後にやぎぺーさんとお話ししたいことがあって、「やりたいことってやっちゃうことだ」という名言を残されていましたよね。

こばかな:岡ちゃんに刺さっていた言葉ですね。

八木:真にやりたいことって、意識すらなく気づいたら体が動いていることなのかも、と思うことはあります。小さなことでいうと、本屋に行ったら自然にこの棚の前にいるとか、ポテトチップスの袋を気づいたら開けていたとか(笑)。

「やりたいこと」って強烈な欲求が必要という感じがするので、やってしまうことを考えたほうがいいのかな。

岡田:やりたい気持ちはないけど、気づいたらやっているという感覚はとても共感します。自分がやってしまうことって、なんでそれをやりたいのか説明できないんですよね。

こばかな:話は尽きませんが、最後に今回のイベントの感想をお願いします。

岡田:やぎぺーさんの書籍は知っていたし、THE COACH ICPも受講していただいていて、改めて「やりたいこと」をテーマにお話しできて楽しかったです。

八木:いつも自分の自己理解プログラムに染まってしまうので、今日はこばかなさんや岡ちゃんとコーチングの観点からもお話しできてよかったですね。

僕は体系的になっているものが大好物で、いままで受講したコーチングスクールの中で、いちばんTHE COACH ICPが全体像を捉えて教えてくれました。

世界中で国語・算数・理科・社会・自己理解というレベルまで布教したいと考えているので、そこに向けて自己理解を広げる活動を続けていければと思います。

こばかな:ありがとうございました!

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