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期待される自分をもう演じなくていい。中村珍晴さんがTHE COACH ICPで得た“心の安全基地”

弱い自分と向き合うことで、生きやすくなった——。

そう話してくれたのは、スポーツの世界で長らくアスリート支援を経験してきた中村珍晴さん。昨年に「THE COACH ICP」のプロコースを修了後、現在はスポーツに関わる人に限らず、起業家や経営者の方に伴走するプロコーチとしても活動しています。

YouTubeやSNS、ブログでの発信や講演活動など、車いす生活になってからも挑戦をつづける中村さんですが、コーチングを生活に取り入れることで、奥にしまわれていた心の声に気づいていったそう。

今回は、そんな中村さんにコーチングを学んだきっかけや受講中に得た気づき、そしてプロコーチになるまでの道のりについて伺いました。

中村珍晴(なかむら・たかはる)
1988年生まれ。大学1年生のときにアメリカンフットボールの試合中の事故で首を骨折し車椅子生活となる。その後、アメフトのコーチを6年間経験し、現在は、大学教員としてスポーツ心理学の研究とアスリートのメンタルトレーニングを実践しつつ、YouTubeチャンネル「suisui-Project」で車椅子ユーザーのライフスタイルを発信している。 Twitter:https://twitter.com/suisui_project


ティーチングに限界を感じていた

——中村さんは、スポーツ心理学の研究やアスリートのメンタルトレーニングをされてきました。受講前からコーチングは身近なものだったのでしょうか?

アスリートに伴走する仕事は、どちらかといえばティーチングの要素が強かったと思います。試合でパフォーマンスを十分に発揮できるように、「覚醒水準」という緊張の度合いを調整する技法を指導していました。

簡単にいうと、緊張しすぎていたら深呼吸をしたり、反対に緊張感がなさすぎたら体に刺激を与えたりする。やり方にはある程度正解があるものです。ただ、そのティーチングだけでは限界があると思いはじめていました。

——ティーチングの限界。具体的にはどのようなことでしょうか?

「こうすればこうなる」と理論ではわかっているはずなのに、実際に行動に移せなかったり、手法を試しても効果が出なかったり、壁にぶつかることが多くて。競技に対する不安やスランプ、指導者との関係性など、あらゆることがメンタルに影響を与えるため、そこに向きあわないと本質的な支援は難しいと感じたんです。

怪我をしたアスリートの支援をする際、特にその難しさを感じました。自分が思い描いていた競技生活が突然失われてしまったとき、「じゃあ、これから自分はどう生きていきたいのか」まさに答えのない問いに向き合わなければなりません。その過程を健全に伴走するために、コーチングの考え方やスキルが必要だと思ったんです。

明るく振る舞わなくても大丈夫。「サブパーソナリティ」の存在に救われた

——実際にコーチングを学んでみて、印象に残っていることはありますか?

「応用Aコース」で学ぶ「サブパーソナリティ」という考え方には、本当に救われました。自分の人格は1つではなく、自分の中には「サブパーソナリティ」つまり副人格がたくさんいるという考え方です。

ワークでは自分の「サブパーソナリティ」を書き出してみたり、それについて対話する時間があるのですが、僕の中にも、一緒に受講している仲間の中にも本当にたくさんの小人たちがいました(笑)その時々で聞こえてくる小人の声に丁寧に耳を傾けてみると、気持ちが楽になっていきましたね。

——どんなふうに気持ちが楽になったのでしょうか?

19歳で事故に遭い車椅子生活を送っていますが、その後社会復帰し、いろんなことに挑戦してきたので「障害を持っているのにすごい」とたくさんの賞賛をいただいてきました。そのこと自体は嫌なわけではないのですが、心のどこかで「明るく振る舞わなくちゃいけない」と周りから求められる自分を演じてしまう癖ができてしまったんです。

でも、車いす生活では我慢しないといけないこともあるし、しんどいこともたくさん経験してきました。周りに褒められることはありがたいけれど、どこか心がザワザワする自分がいるなあと。「この気持ちはなんだろう」と練習セッションで深掘りしてみると、「つらいなあ」と弱音を吐いている副人格の存在に気づいたんです。かなり奥のほうに閉じ込められていました。

——弱音を吐いている自分の声に気がついたんですね。

僕が生きてきたスポーツの世界は、我慢することがいいとされる文化が根付いています。それも相まって、弱音を吐いちゃいけないと無意識に思ってたのかなあと......。本当はつらいと思っていた自分に対して「大変だったよね」と優しく受け止めてあげることで、すごく心が楽になりました。

コーチングは、人生における“心の安全基地”

——中村さんは「プロコース」も修了し、その後はプロコーチとしても活動されています。プロになるまでの道のりをお聞かせください。

「基礎コース」を修了し「応用Aコース」がはじまるまでの間、たぶん40〜50人くらいとセッションの練習をさせていただきました。知り合いから始めて、また別の人を紹介してもらうバトン形式で。

「量質転換」つまり質を良くするには量をこなすしかないという考え方が僕のベースにあるので、とりあえずやってみてうまくいかなかったら改善点を探して次にトライすることをとにかくつづけました。

——「基礎コース」後の段階で、40〜50人とはすごい数ですね!

体育会系ですよね(笑)正直、最初の練習セッションは全然うまくいきませんでした。僕の場合、コーチングの感覚を掴めるようになるまで、実はかなり時間がかかっているんです。だいたい30人目くらいで、やっと手応えが芽生えてくるような感じで。

——うまくいかないときは、どんなふうにモチベーションを保っていましたか?

受講生同士のSlackコミュニティ「THE COACH Lounge」で月に1回開催されている「トライポッド」と呼ばれる練習セッションにも参加していたのですが、そこでうまくできないもどかしさを聞いてもらっていました。

あの時間がなかったら、心が折れてプロコーチになっていなかったかもしれないです。要所要所で仲間たちに話を聞いてもらえたから、ここまで練習を積めたんだと思います。

——コーチとしてもクライアントとしても多くのセッションを重ねていくなかで、改めてコーチングの魅力とはどんなところにあると思いますか?

やっぱり、話を聞いてくれる存在のありがたさを痛感します。何をしゃべっても大丈夫な“心の安全基地”を持つことが、こんなに人生を豊かにしてくれるんだなと。それが「THE COACH ICP」で得た一番の学びだと思います。

月に一度でもコーチングを受けると“心のガソリン”が満タンになって、次の1ヶ月またがんばろうって思えるんです。スキルを磨くこと以上に、安心安全でそのままの自分でいられる場所が、自分の人生の中に1つ増えるだけでもすごく価値があると思います。コーチングを学んで、本当に生きやすくなったと思いますね。

クライアントに寄り添うために、自分も挑戦しつづける

——コーチングを学んだことで、仕事や生活にはどんな変化がありましたか?

「待てるようになった」というのが大きな変化ですね。アスリートの支援においても人それぞれのペースがありますから、本人が行動したくなるまで見守れるようになったと思います。同じ行動をとるにしても、人に言われてやるよりも、自分で決めたほうが納得感を持って前に進めるものですよね。

いま1歳半の息子がいるのですが、子どもをみていてつくづく思うのが「本人には急ぐ理由がない」ということです。僕ら大人の都合に合わせて急いでご飯を食べさせたり、着替えさせたりしているだけなんですよね。親にコーチング・マインドがあれば、その子のペースに合わせて成長を見守ることができるかもしれません。言うのは簡単ですが、見守るのは結構大変で僕もまだまだ修行中です(笑)

——最後に、中村さんが今後目指す「コーチ像」を教えてください!

自分自身が一番挑戦しつづける人でありたいと思っています。最近はスポーツに関わる方以外にも、起業家や経営者の方のコーチングもしていますが、そのクライアントさん自身やご家族、そして社員の皆さんの人生にも関わるような大きな決断をする局面に伴走することがありました。

コーチが生半可な気持ちでは、そういう大事な決断に寄り添うのは不可能だと思っています。時には見守り、時には一緒に背負うくらいの気持ちでいる。そのためには自分自身も大きな決断を経験したり、挑戦をつづける人でありたいなと、心から思っています。

執筆:佐藤伶

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