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傾聴のコツって?大切な人の話を聞くときに、意識しておきたい5つのこと

上手なコミュニケーションの秘訣は、傾聴にあり——。誰もが一度は、そんな言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

傾聴とは、文字通り相手の話に耳を傾けることで、コーチングの手法のひとつともされています。ですが、いざ「傾聴してみて」と言われても、具体的にどんな風に話を聴いていいのかわからない人も多いはずです。

そこで今回は、プロコーチとして多くの経験を積んできたTHE COACH ICPの講師 谷内さんが、日常生活にも活かせる傾聴のコツお伝えします。普段はなかなか知る機会のない「話の聴き方」を、ぜひ参考にしてみてください。

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語り手:谷内 真裕(たにうち まさひろ)
THE COACH ICP講師。エンジニアとして研究開発・SIer・受託開発・自社開発を経験し、Sansan株式会社に入社。エンジニアリングマネージャーとして開発チーム立ち上げ・メンバー育成・組織的課題の解決に向き合うなかでコーチングに出会う。その後エンジニアリング組織のマネージャー・社内コーチとして職種・部署・役職を問わず1on1・コーチング・ワークショップを行う。2021年7月よりTHE COACHに参画。

1. オープンな問いで場づくりを

大前提として「傾聴」は、相手がこちらに話をしてくれて初めてできるものです。そのため、傾聴のファーストステップとして「話し手が話をしても大丈夫だと思える場づくり」が大切です。

「話をしても大丈夫だと思える場」を作るために有効なのが、オープンな問い、つまり、相手がいかようにも解釈・回答できる質問を投げかけることです。

たとえば相手が何かに悩んでいる様子だったとき、「嫌な出来事があったの?」「仕事がつらいの?」と、相手の今の状況を”当て”にいってしまう人も多いのではないでしょうか。しかしこの問いの立て方だと、取り扱う話題を聞き手側が決めたり・狭めたりしてしまう可能性があります。

コーチングの場では、「一体どうしたんですか?」といったオープンな問いを投げかけるのが一般的です。「何を話しても大丈夫」と話し手が感じられたときに初めて、「話したいことを話せる場」が生まれるのです。

2. 相手に好奇心を向けた「オウム返し」

傾聴について学ぶとき、書籍やメディアなどで真っ先に取り上げられるのが「オウム返し」です。オウム返しとは、相手の発話を同じように繰り返すテクニック。一見簡単そうに思えますが、「何も考えていないと思われるのでは?」「不快に感じさせてしまうのでは?」という怖さから、ついつい相手の話を要約してしまったり、感想を述べてしまったりと、意外と難易度が高いのです。

オウム返しをするときには、相手に対して「言葉はそのままに、言葉以外のものも返す」ということを意識してみてください。より噛み砕くと、「相手と同じ言葉を使いながら、声のトーンや表情で『聴いているよ』のサインを返す」ということです。

声のトーンや表情も、意図的に作りこむわけではありません。大切なのは、相手の話に興味・関心・好奇心を持つ姿勢です。

次は何の話が出てくるのかな。
またひとつ、この人の新しい一面を知れそうだな。

そんな風に好奇心を持ちながらオウム返しをすると、自分の声のトーンや表情も好奇心に満ちたものになっていきます。するとごく自然に、言葉以外の部分から「聴いているよ」のサインを届けられるのです。

3. 聞き手が「自分の中の声」を自覚する

相手の話にしっかりと耳を傾けるためには、聞き手が自分の中の声を自覚することも大切です。

「転職したい」と考えている人の話を聴く場面を想像してみてください。対話の中で、話し手が会社の制度や上司にずっと怒っていたとしたら、聞き手のあなたは何を考えますか。

「なんでこんなに怒っているんだろう?」
「この人、愚痴を言いに来たのかな?」
「今日のこの時間、なんのためのものだったっけ」

そんな思いが浮かんでくるのではないでしょうか。ここで聞き手がその声に反応し向き合ってしまうと、「聞き手が聞き手の頭の中の話を聴く時間」となり、傾聴とは程遠い状態に陥ってしまいます。それを避けるために、聞き手が自分の声を自覚し、適切に取り扱う必要があるのです。

自分の声の取り扱い方には、いくつかのパターンがあります。

(1) 自分の声を自覚したうえで、一旦横に置いておく
(2) 「とても怒っているように見えますが、どうしたのですか?」と、相手に好奇心を向けた問いに転換する
(3) 「今日は話を聞ける状態ではないので、明日にしませんか?」と提案する

(3)については極端な例ですが、このように自分の声の取り扱い方もひとつではありません。自分の中に湧き上がる声にどんなものが多いのかに自覚的になり、取り扱い方のバリエーションを持っておくことで、落ち着いて相手の話を聴くことができるようになります

4. 相槌は多めに

普段のコミュニケーションで、人は意外と相槌を打ちません。ですが話し手からすれば、相槌が少しばかり多くても気にならないもの。恐れることなく多めに相槌を打つことも、傾聴のコツのひとつです。

というのも、相槌には「話を聴いているよ」というサインのほかに、次の言葉を促す効果があるからです。また相槌は、「長い間黙っていたり考えていたりしてもOK」というサインとしての役割も持っています。

聞き手が相槌を打たなかった場合、話し手は「次の言葉を言わなきゃ、言わなきゃ」と感じてしまいます。一方で、話し手の言葉の後に一度「うん」という相槌が挟まることで、話し手は「今は考えていても大丈夫な時間」と思え、聞き手も次の言葉をゆったりとした気持ちで待つことができるのです。

5. 沈黙を恐れない

わたしがコーチングセッションを行う場合は、はじめに「沈黙歓迎です!」と伝えています。なぜなら、コミュニケーション——ことコーチングにおいては、沈黙がもっともリッチな時間だと信じているからです。

コーチングは、ほかの誰にも邪魔をされずに自分について考えられ、それを待ってくれる人がいる時間です。考えた末にこう思った、こう気づいたと話してみることができる時間でもあります。

そしてその時間は、聞き手(コーチ)のためではなく、話し手(クライアント)のために存在しています。だから、どれだけ沈黙が長くなったとしても良いのです。沈黙は相手が考えてくれている証拠であり、怖いものではありません。聞き手も沈黙を恐れず、相手が自己と向き合い考え抜くのを、一緒に待っていてほしいと願ってやみません。

”傾聴そのもの”がゴールではない

ここまで、「傾聴のコツ」として5つのポイントをお伝えしてきました。しかし傾聴はより良いコミュニケーションを取るための手段のひとつであり、それそのものがゴールなわけではありません

結局のところ傾聴においては、相手が「ちゃんと話をきいてもらった」と思えているかどうかが重要です。オウム返しや相槌などのテクニックは話を聴くためのコツのごく一部にすぎないということを忘れず、まずは相手の心に好奇心を向けることを大切にしていってくださいね。

今回ご紹介した内容は、日常生活で使える傾聴のコツでした。THE COACH ICPでは、コーチとしての傾聴スキルを含む、コーチングの方法について体系的に学ぶことができます。ご興味を持たれた方は、ぜひ説明会に参加してみてください。

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